絶命のユーフォリア

絶命のユーフォリア

#05 1-5

 この調子では仲間全員と体を重ねることになってしまうのではないか。それも早々に、惚れた腫れたのすべてを差し置いて、このおかしな環境という濁流に呑まれるように。
 モーリェの懸念は現実味を帯びつつあった。
「それでですね、この端っこの印をつつくと次のページを見れるんですよー。稀に一つ前の画面に戻ってしまうことがありますけど、それは商品の更新が入るからなので、またリストを開き直してあげると」
「うん」
 一行がベースキャンプとしている場所の上階、何らかの店舗だったと思しきフロアの跡に、彼らの主である死生匣テラヴァイスが浮かんでいた。
 死生匣テラヴァイス空間跳躍リレース時に自ら居場所を選ぶ。しもべたちがそれを動かすことはできない。
 モーリェと今日の指導役であるジンリンは、死生匣テラヴァイスを前に並び立って操作方法のレクチャーを行っていた。しかし丁寧な解説は少年の脳に染みず、頭を素通りして廃墟に散ってしまう。目の前の装置より、隣のおとこ?のほうが気になって仕方がなかった。
 すっきりとした輪郭の、女のような美男子だ。結いあげた長い髪を造花で飾り、裾がふわりと広がったロングワンピースを纏っている。闘人レイズド一行の紅一点と呼べそうないでたちだ。
 しかし澄んだ顔立ちとの対比を見せるように、スカートの裾からは八本の異形の脚が覗き、床に鋭い爪を突き立てて体を支えている。初めて彼を見たときはそのギャップに驚いたが、接してみると穏やかな物腰に再度驚くこととなった。
 しかしそれらに輪をかけて衝撃的だったのは、下半身が人の形を留めていない身体に、他でもない自分自身が性的に興奮できてしまったことだった。
「……まだ具合が悪いでしょうか?」
「いや! 大丈夫! だから!」
 学習に身が入っていないことは筒抜けのようで、ジンリンは心配そうな顔で教え子を見つめてくる。モーリェは力強く首を振る身振りでそれを否定した。
 相手の言う具合の悪さ、すなわち種子蟲グラフタによる発作はつじょうは既に解消している。つい先ほどまで空き部屋で二人まぐわっていたために。
「それならいいんですけど……何か困ったことがあったら気兼ねしないで言ってくださいね?」
 ジンリンはにこやかに告げたあと、突然きつく目をつむり、「んっ」と艶めかしい声をあげた。そして小さく息を吐き、また何事もなかったかのように話を続けようとする。耐え切れずモーリェが口を開いた。
「あの、正直そのお腹が気になって……勉強どころじゃない……」
 盗み見るように、視線を相手の腹部に滑らせる。今朝はほっそりとしていた下腹が、食べすぎや着膨れといった理由では説明がつかないほど大きく膨らんでいた。
 いつの間にか大きさを増し、気付けば腹が目立ちはじめたころの妊婦程度になっていたそこは、時折ぐにゃりと形を歪める。その動きに合わせて、ジンリンはわずかに甘い声を洩らした。興奮とともにある懸念が強まり、モーリェの背に寒気が走る。
「あっ……そういえばそうですよね! 普通気になるものね! あのこれは後々説明しようと思ってたんですけどまず購買網レプライヤの使いかた教えなきゃって意気込んでたら忘れちゃって、ええと」
「先輩落ち着いて」
 すっかり失念していたという様子で、彼は恥ずかしそうに視線をあちらこちらにさ迷わせた。どうやら本気で忘れていたらしい。この状況をおかしいと思う者がしばらく現れなかったのだろう。
「話には聞いてるんだ、ジンリンさんが従えていた生物はそうやって自分で作ったものだって」
「そうなんですよー。こうやってお腹で急いで育てて……モーくんの子じゃないですからね?」
「あっうん」
 懸念は一言で叩き斬られた。この歳で、それも不気味な謎の生物の父になってしまったのかと、内心ひやひやしてる状態からあっさり解放され、体が軽くなったように思えた。
「確かに性交をトリガーとして発生しますけど、できるのは自主性を持たない分身なんですよ。これは私が念じた通りにしか動かないんです」
「子供……ではないんだね」
「はい、あくまで道具です。そうじゃなかったら、使い捨てられない」
 初めて会ったときのことを思い出す。ジンリンが従えた不気味な生物たちは、縦横無尽に動き回りイゾラを襲っていた。そのほぼすべてが切り伏せられてしまってなお、悲しげなそぶりを見せないということは、彼にとっては本当にただの道具なのだろう。
 異形の脚、そして子機を孕む機能をひっくるめて、〈懐胎せし女王クイン=アラネア・ファンク〉というひとつの生体武装グラフトの機能らしい。別々の生体武装グラフトを七つも発現させているイゾラとは対極の変化には興味があった。
「中ですごい動いてるみたいだけど、痛くないの」
「痛いですよ。でも、その……モーくんも知ってるじゃないですか、ここでの〝痛い〟はどういうことかって」
 ジンリンはそっと腹を押さえ、今にも消え入りそうな声で訴えた。恥じらう乙女のような素振りに、モーリェもつられて俯いてしまう。
 体の中から与えられる苦痛とは、そして共に生じる快感とはどんなものなのだろうか。想像は目の奥で種子蟲グラフタが暴れ回ったときのさとリンクし、一度は収まったはずの熱を再び揺り起こそうとしていた。
「とっ、とにかく事情はわかったから! 続きをお願いしたくて!」
「そうですね!」
「更新がどうとかのところから!」
「そうですね!!」
 気まずい雰囲気を振り払うべく大きな声をあげる。そして、
「童貞大決戦だなお前ら」
 唐突に背後からかけられた声に、二人揃って驚き振り返った。
「イゾラさん!?」
「えっ、ちょっと、はやい」
 静かに階段を上ってきたらしいイゾラが、「よう」とにこやかに左手を振る。その姿には四肢が揃っており、酸で焼け爛れてもいない。服と肌には返り血を拭いた跡があった。
「治療に……ではないですよね、シエロはどうしました?」
「あいつは下で日誌書いてるぞ。猿の群れに武器と飯盗られてすってんてんになっちまったんだよ、あとで日誌見といてくれ」
「それはまた厄介な……」
 渋い顔で呟くジンリンの隣を陣取り、イゾラはキューブに映る情報を見た。そしてモーリェの顔を覗き、鋭い歯を見せて笑う。
「感覚は掴めたか? ちょっと何か買ってみたらどうだ、俺にツケといていいから」
 おそらくは死生匣テラヴァイスの操作方法について話しているのだろう。少年は「いや……」と気まずそうに言葉を濁す他はなかった。同じく居心地の悪そうな顔をしたもう一人がその間に割って入る。
「レクチャーはこれからなんです」
「ん? 今まで何やってたんだよ、ナニをか」
 ジンリンが黙って頷く。その共犯者もまた隣で俯いた。
「あー、そういや植えたてだもんな……仕方ねえか」
 二人の事情が咎められることはない。行動を共にしている闘人レイズドたちは、程度は違えどみな性に明け透けで、営みを全面的に肯定していた。
 共に過ごした二晩の間に、彼らが投げつけあった下品な話題を、モーリェはしっかりと覚えている。心臓の損傷と緩やかな失血死ではどちらが気持ち良いか、などという常軌を逸した議論も含めて。
 未だその雰囲気に乗れずにいるモーリェの様子に気付き、イゾラは彼に歩み寄った。距離を縮め、耳元で囁くように告げる。
「やかましくて悪ぃな、今すぐとは言わねえからゆっくり慣れてってくれよ。俺らくらい雑になれりゃ色々楽になる」
「……うん」
「あとジンは乳首がすっっっげえ弱いから弄ってやると超よろごぶぐッ」
 異形の脚による一撃が、余計なアドバイスを強制的に終わらせた。爪がイゾラの脇腹を抉り、一部の内臓を突き破っている。滴った血がまた服を汚した。
「イゾラ、治療のおさらいしましょう?」
「……とまあ、この通りこいつは未だに照れくさがってくれる貴重なやつだからおもしっぐぇッ」
 二本目の爪がへそに深々と突き刺さる。イゾラは一瞬表情を歪めながらも、すぐにまた笑顔を見せた。明らかに懲りていない。対するジンリンも微笑んではいるが、こちらは目が笑っていない。
「わーったよ治療な治療! 目かっぴらいて見てろ!」
 むくれているジンリン、そして反応に困っているモーリェの前で、たった今負傷した男が死生匣テラヴァイスを操作する。前面に表示されていた購買網レプライヤのメニューを抜け、他の項目を呼び出した。
 新入りは映し出される情報を読み込んでゆく。以前見た際は謎の記号でしかなかった文字が、今では母国語以上にすんなりと読めるようになっていた。
 仲間たち曰く、はじめて死生匣テラヴァイスによって再構築された際に、頭の中に直接言語を叩きこまれるらしい。インストールという概念を理解するまでには少々時間がかかった。
 イゾラは逐一解説を挟みながら画面を操作してゆく。治療を実行する旨の確認ダイアログをつついた瞬間に、ジンリンがタイミングよく爪を引き抜くと、血が噴き出す前に再生が始まった。床をさらに汚すことなく治療が成され、傷はきれいに消え去った。
「だいたい覚えたか?」
「わかった……と思う……」
「上手くいかなかったら誰か連れ込んで訊いてくれよ。あと使うFフィードは損傷具合によって変わってくるぞ。下半身まるっと食われたやつ運び込んだら、蘇生より高くついたりする」
「もうどうしようもないと思ったら、仲間に荷物を預けてとどめを刺してもらったほうが良いですね。連れ帰ってもらう手間も省けます。蘇生に半日かかるので、時間がないときはその限りではありませんが……」
「蘇生に寝る時間を含んでるって考えたら死んどいたほうが得だと思うぞ」
「半日も寝こけなくたって戦えるじゃないですか」
「あとついでに汚れ落として貰えんじゃん、つまり水浴びも兼ねる。マジすごい」
 さらりと語られる内容は、ことごとく命の価値を欠いていた。どちらが得かという議論の中で、闘人レイズドたちの命は完全に消耗品として扱われている。
 モーリェはそのやりとりをただ黙って聞き届けた。自分もいつかは同じような軽さで加わる日が来るのだろう、とぼんやりと考えながら。
 討議は平行線を歩んでいたが、ジンリンが手振りを添えて話を遮る形で終わった。相手につきつけた手ではないほう、男にしては華奢な左手が、いつの間にかさらに大きく膨らんだ腹を押さえている。心なしか顔が紅潮しているように見えた。
「ちょっと、席を外すので……あとはお願いしますね」
「見せてやりゃあいいじゃん」
「まだ刺激が強すぎるでしょう!?」
 力強く言い捨てて、異形の妊夫はそそくさと階下へと消えてゆく。爪が床を叩く音が遠ざかり、フロアに静寂が訪れた。
 モーリェは新たな話題に困り、様子を伺うように、イゾラの顔をちらりちらりと見上げた。二人きりになるのは出会った日以来であることに気付く。死生匣テラヴァイスを前にした、あの日の再現に近い状況ではあるが、そこにひょっこりと顔を出す者はいなかった。
「これ、触ってみていい?」
「おう、やってみ」
 数日前を思い出しながら死生匣テラヴァイスに触れてみる。硬い表面を指先でつついてみても、登録だ何だと言って心臓を潰すようなことはしてこない。
 ディスプレイにいくつも表示された小窓は、様々な情報を命令通りに映し出してくれた。自身に与えられた名前、負傷していない旨、わかりづらい単位で記された身長と体重、闘人レイズドとしての評価らしき値。
 そして発現した生体武装グラフトに〈深海抱擁譚クリノイディア・スクリプト〉という名が与えられていること。
「呑み込みが早いな」
「そう……かな」
 生体武装グラフトの名前に何度も触れてみるが反応はない。使い方を教えてくれる機能はついていないようだ。
 しかし自身の右目に大層な名が与えられていたことよりも、イゾラが肩を寄せるように近づいて同じものを見ていることが気になって仕方がない。
 戸惑っていた。フォグの小柄さとジンリンの女性的な顔立ち、そのどちらも持たない雄らしい雄であるイゾラ相手に、こんなにも色気を感じてしまっていることに。
 傷が癒えたばかりの引き締まった腹に触れてみたい。触感を確かめたい。よこしまな考えは視線に滲み出ていたようで、目が合った途端ににたりと不敵な笑みを浮かべられてしまった。
「ジンのエロい顔見て盛っちまった?」
「……それも少し……。あの、ジンリンさんはいつもああやってその、仲間と」
「おう、駒作るときは誰かしら捕まえてヤってるぞ。まあ誰彼構わずっつーのはあいつに限ったことじゃないけどさ。俺だって全員抱いたし、全員に抱かれた」
 モーリェは僅かに表情を歪める。嫌悪感よりもはるかに強く刺さる、それでいて得体の知れない感情が、胸の内で火を灯していた。
 彼の言う『全員』に自分が含まれていない、ということがどうしてこんなに癪に障るのだろう。
「気持ち悪いと思うか?」
「わからない……でも否定しちゃいけない気がする。僕も元々汚れた身だし、そう思えば思うほどきっと自分の首を絞める……」
「……そうか」
 少年がこぼす過去の断片を、イゾラは落ち着いた声で受け止めた。憐れむでも蔑むでもなく、ただそこにあることを認めるだけの一言で。
「ここにいる限り、どっから来たとか何者なんだとかを無理に訊いてくるやつはいないさ。そこに首を突っ込まないのが不文律だからな」
「……イゾラさんも、訊かれたくないの」
「ダメってわけじゃねえけど、話の種になるような楽しい育ちじゃねえしなあ。ここにいる奴らはどいつもこいつもそんなもんだ、故郷に帰りたくない奴ばっかの吹き溜まりなんだよ」
 死生匣テラヴァイスに映し出された仲間たちの顔に目をやる。今までに聞いた話を統合すると、彼らはみな何らかの重苦しい事情を抱えながら、突然の召喚によりそのすべてから切り離されたらしい。
 ここ数日で目にした生活環境は過激なものだったが、彼らは顔を合わせれば軽口を叩きあって笑顔を見せていた。早くその中に混ざりたい、と思う。体だけでなく心も故郷から遠のくことができるなら、それはきっと幸せなことなのだろう。
「イゾラさん、僕は」
「おう」
「みんなの役に立ちたい……早く肩を並べて戦いたいんだ。だから一から教えてほしい、厳しくたっていいから、とにかく早く」
 無意識のうちに詰め寄ってしまっていた。にわかに焦りだした気持ちが右目を疼かせ、目の奥がちりちりと痛んだ。
 イゾラは少しだけ身を屈め、視線の高さを近づけて諭すように応える。
「気持ちはわかったが、急いでどうにかできるってもんでもないぞ。俺はいろんなものにキレながら焦って遠回りした。弱んねえ程度にできることから一つずつやってこうぜ」
「……うん……」
「そうと決まれば次はアレだな、ご褒美だ! 一通りのことができるようになったら、何でも好きなもん用意してやるよ。何がいい?」
「えーっと……」
「秘蔵のうまいメシとか、エロ本とか。あとはそうだな、ジンにすごい服着せてセックスできる権とかどうよ。最近は抑えてるっぽいけどいつもはなんかもっと大胆だぞ、乳が妙にエロく見えるやつとか選んでくるし」
 それは勝手に用意していいのか、と言おうとして呑み込む。体を開く約束は、ここでは本当に軽々と行えてしまうものなのだろう。上半身だけを見れば美術品のように美しいジンリンは、さぞかし扇情的な光景を見せてくれるに違いない。
「えっと、ジンリンさんよりは、その」
 しかしそれでは物足りないと思ってしまった。モーリェが真に欲しいものは、してみたいことは、目の前に堂々と立っているのだから。
「イゾラさんと……したい」
 口にしてから、本当に遠慮なく言ってしまったことを後悔した。自分が欲情している旨を言葉にするのは、思っていた以上に恥ずかしいことなのだ、と実感させられる。熱に浮かされている最中以外で交わりを求めるのは初めてのことだった。
 イゾラは一瞬きょとんとした顔を見せたかと思うと、すぐに「マジか!」と軽い口ぶりで返し、顔を綻ばせた。
「ほー、そうかそうか、嬉しいなそれ! ……けど、優しくできる保証はねえぞ?」
「その体に優しさを求めるのはどうかと思う」
「正直だな!? まあ確かにその通りなんだけどよ……その代わり」
 音もなく伸ばされた触手がモーリェのシャツをめくりあげる。剥き出しになった、傷跡だらけの痩せた胸に、イゾラは異形の左手を添えた。
「ブッ壊しあう楽しさは教えてやれる」
 鋭い爪が肌を浅く切り裂いてゆく。真新しい傷に血の玉が浮かび、雫となってゆっくりと垂れていった。
「…………っ」
 モーリェの吐息に、にわかに熱が篭る。小さな傷を作る行為はイゾラなりの愛撫であると気付いた途端、急激に頭に血が上りはじめた。
 イゾラはそこに追い打ちをかけるように、ぐいと顔を近づけて唇を重ねた。咥内を丹念にねぶられたモーリェは、自らにできる限りの舌遣いをもって動きに応えようとする。しかし胸から腹にかけてへの刺激に気を取られ、自らの動きに集中できずにいた。
 皮膚をわずかに裂く痛みが、そして痛みに乗じて訪れたむず痒さが、思考能力を容赦なく剥ぎ取ってゆく。どうしようもなく、い。
 イゾラはいつでも自分を殺すことができる。皮膚を切り裂いて臓物をぐちゃぐちゃに刻むことも、右手の刃で首を刎ねることも、彼にとって造作もないことである。そう意識してしまうと、体の芯から熱くなりとろけてしまいそうな心地になった。
 否が応でも自覚してしまう。モーリェという名と新たな体を得た少年は、イゾラに殺されたくてたまらないのだと。
「…………っ、は、ぁっ」
「ごちそうさん。続きは一人前になってから、な?」
 離した唇は名残惜しそうに銀の糸を引いた。イゾラはすっかり紅潮した頬にキスを落とす……と同時に、モーリェのへそに爪を押し込んだ。凶器はやすやすと皮膚を貫通し、腸を傷つける。少年は突然強まった痛みに顔を歪めながら小さく喘いだ。
「じゃ、さっそく治療のおさらいやってみっか。これくらいならほっといても治るけど試しにっつーことで……昨日は特に怪我もしなかったんだよな、たしか」
「しなかっ、た!」
 震える手でディスプレイに触れる。じわじわと身を苛む痛みは、これからの生活への期待と不安を煽った。はらわたにひとつ穴が開いただけで、雄の部分が容赦なく服を押し上げてしまう。もっと激しく身を傷つけられたとしたらどうなってしまうのだろう。
(こんなざまで本当に戦えるの……?)
 モーリェは自らの体に改めて戸惑いながら、少々乱暴なレクチャーの続きに取り組む。
 指導役はその後、産みたての分身を引き連れて帰ってきたジンリンに引き継がれた。しかしのちに再び指導以外の行いせいこういに及んでしまい、死生匣テラヴァイスの機能を一通り教わるまでにはかなりの時間を要してしまった。