アカシア書房

おやすみ、スターダスト

#09 どこか、とおい

 昔々のではない、つい最近の話です。

 異なる世界に、二人の魔術士がいました。
 魔術士一と魔術師二――じゃあわかりにくいから、仮に『剥製屋』と『本屋』にしましょう。

 『剥製屋』は強大な力と歪んだ心を持つ魔術士でした。
 育った世界で他の魔術士を次々と喰らい、暴虐の限りを尽くした彼は次の獲物として、異なる世界に住む魔術士である『本屋』に目をつけました。
 『本屋』を喰らえば更なる力を手に入れられると思ったからです。

 『剥製屋』はまず手始めに、様々な世界に遣わされていた『本屋』の手下をさらい、『本屋』の目の届かぬ場所へ閉じ込めました。
 まず、女を二人と、男が一人。『剥製屋』は彼女らを苦しめ、『本屋』の情報を引き出そうとしました。
 しかし誰も『本屋』の弱点を知らなかったので、『剥製屋』は拷問を諦めて、三人をただの玩具として使うことにしました。
 興味をなくした男を壊すと、女たちが――特に片方がより深く――嘆き悲しんだので、『剥製屋』はとても喜びました。

 『剥製屋』はもっと『本屋』に親しい手下を捕らえようと試みましたが、なかなか機会が訪れません。
 一方で、『本屋』はいなくなった三人の代わりとして、三人とそっくり同じ手下を作りました。
 記憶だってほぼ一緒の、『前の自分がいなくなる直前までを覚えている』手下たちです。
 彼らは主である『本屋』の命に従い、またさまざまな世界へと旅立ちました。
 『剥製屋』は『本屋』を喰らうための決定打をなかなか得られない腹いせに、以前壊した男をもう一度捕らえることにしました。
 これがあると、お気に入りの玩具がとても良い声で啼くからです。
 『剥製屋』はもう一度男を苦しめ、玩具たちに見せて遊びました。

 そしてある日、男が『剥製屋』の城から逃げ出しました。
 壊される前の自分が密かに残していた脱出の手引を見つけて、手足をもぎ取られてしまう前に実行に移したのです。
 女たちを置いて逃げ出し、その結果荒野で野垂れ死んだ男を、『剥製屋』は嗤いました。
 しかし、男の逃亡は確かな意味を成していました。彼が息絶えた場所は、その主である『本屋』の目の届くところだったのです。
 手下たちが消えたわけを、男の死を介して知った『本屋』は、『剥製屋』のもとに刺客を差し向けました。
 『本屋』が従える手下たちの中で、最も戦いに長けた者を。
 そして――