アカシア書房

アカシアファミリアス

#21 No.0.5 ダナンテット

No.0.5 専属使用人 ダナンテット
ダナンテット「ありがとうございます、ご主人様も喜びますわ」
 頼まれていた荷物と、ついでにと調達を命じられた茶葉を渡すと、ダナは微笑んで頭を下げてくれた。人形じみて整った顔立ちは美しく、決して触れてはならないもののように思える。実際人形に近いのだろう。私には魂がありませんから、と本人が言っていたのを思い出す。
「しかしボスもこんなの飲むんだな、なんか甘いのは飲まなさそうなイメージがあった」
「こういうお茶、好きですよ?香りを楽しめればそれでいいそうなので、お砂糖は入れないのですけれど」
 彼女――に見えるが無性別であるらしい――がする話は、殆どが彼女を作ったご主人様、すなわち俺らのボスに関するものだ。心がないだの魂がないだのと自称する割に、その話をするさまはどこか楽しそうだ。
 ダナは普段なかなか他の人員の前に現れない。ここら一帯、地下に位置する編集長用の区域に篭っていることが多いようだ。そこで淡々と、毎日ボスの補佐と身の回りの世話をして過ごしている、らしい。あとは写本機を洗ったりだとか。
「それでは失礼しますわ、わたくしもう少し仕事が残っていますの」
「おう」
 軽やかな歩みで、しゃんとした背中が遠ざかってゆく。行く先は更に地下へと続いているらしい扉。ボスがプライベートに使用している空間は、魂を持たぬ私兵であるという三人以外の立ち入りが許されていない。
 その奥でダナは何をしているのだろうか。茶葉と共に渡した薬は何に使うのだろうか。
 組織の主も、その最も側にいる従者も、自らを謎のベールで覆い続けている