アカシア書房

アカシアファミリアス

#20 No.2 セティニス

No.2 技術班 セティニス
セティニス 痛覚の消えた右腕を弄くり回されている。顔に布をかけられているために患部は見えないが、腕の肉を切り開かれる感覚は気持ちの良いものではなかった。骨に押し当てられる何らかの機械の音がうるさい。
 程なくして作業は終わり、布が取り払われる。上体を起こしてまず目についたのは、治癒術で切開痕を塞がれた腕と、ガーゼで額を拭うセティの姿だった。千切れかけの状態からよくもまあこんな綺麗に治したもんだ。
「終わったわよぉ」
「ありがとさん」
 聞き慣れた、間延びした声。一仕事を終えて安堵の表情を浮かべている。
「可能な限り強度を高めたつもりだったんだけど、それでも折ってくる化物がいるのねえ。新しい素材を検討しなくっちゃ」
「これ以上重くしないでくれよ……」
「善処しまぁす」
 うふふ、と笑って、ピンセットのような器具で摘んだ黒い破片を見せてくる。生体強化合金だとかなんとか、とにかく凄い素材でできている俺の骨だ。こいつのせいで俺の体は妙に重い。大抵の刃物なら骨で受け止められるほどの強度はありがたいんだが。
「次があったらもっと頑丈に作るわ。だから、大丈夫」
 俺の腕にぺたぺたと触れて具合を確かめながら、穏やかな声で囁いてくる。小さな子供に言い聞かせるように優しく、甘ったるく。
「あなたは誰より強いもの」
 紡がれる言葉は祝福であり呪いでもあった。俺の身体を知り尽くした技術者は、最高の作品であることを俺に求める。手入れの度に注がれる執着が、俺の中にどろりと濃く溜まって、波打った。