マルジュ こいつがとんでもないことをさらりと言ってくるのは知っていたし、慣れていたはずだったが、さすがに今回は思いきり突っ込みを入れたくなった。なぜお前はそんな状況で落ち着いていられるのかと。
「すまない、借りはいずれ返す」
「いや俺はお前らの尻拭いが仕事だから気にしなくていいんだが……どうすんだよこれ……」
迎えに来てくれと言われて向かった先は陰気な街の賭博場で、係の男に用件を伝えると、何かの勝負でぼろ負けしたらしいマルが連れられてきた……というより、渡された。
涼やかな顔立ちと眼鏡、そして淡々と状況を説明する口ぶりはいつも通りだが、その下がない。手足から胴体に至るまで、喉笛より下のすべてが消え失せている。
なんでも、豪快に賭けに負けて持っていかれてしまったらしい。首の切断面からの出血は止まっており、何らかの魔術的処置を施した跡が見えた。延命と鎮痛のためのものらしいが、効果が切れるまで幾ばくもないだろう。
「痛覚が戻る前に処分してくれ。眼の回収も頼む」
「処分……なあ」
こうなってしまった者はそのまま死ぬか、作り物の体を借りて労働力として酷使されるものらしい。現地の奴らはこいつの飄々とした様子にさぞかし驚いたことだろう。頭も含めて替えが効くだなんて思わないだろうし。
俺らの魂は死をもって回収され、替えの肉体に移される。そういう仕組みだ。
「とりあえず急いで技術班に渡すわ」
「ああ」
空間操作の術を行使し、自社への道を作る。あとは仲間に丸投げしようと決めて、その中に踏み込んだ。