ベルトゥス こん、こん、と窓を叩く音。書房に設けられた自室で休憩を取っていたところを邪魔する無粋な輩がいる。そっちから来られたらドアノブにかけた札の意味がないだろうが。こんな横着者の心当たりは僅かだが、今回はその中で一番の外れくじであるような気がする。
嫌々ながらカーテンを開けると、今に限らずいつだって視界に入れたくない、殴りたくなる笑顔がそこにあった。ぼろきれとの区別が難しい前衛的な服を着た変態が、三階の窓枠にへばりついている。俺は窓を開けて拳を構えた。
「ちょ、待てって! 覗きとかじゃないし! 今日は使いっ走りで来ただけだし!」
そいつは片手で窓枠にぶら下がったまま、もう片方の手に持っていた封筒を差し出した。差出人の名は確かに知っているもので、封蝋の印璽にも見覚えがある。
「……どーも」
むしり取るように手紙を受け取ると、ベルは「もっと褒めて」と主張しだしたが無視した。
そしてすぐに窓を閉めた――つもりだったが、目の前のクソ野郎が顔をねじ込んできたせいで上手く閉まらなかった。窓と窓枠がもっと頑丈な素材だったら、このまま頭の骨を割ってやったのに。窓に挟まれてなお、そいつは癪に障る声で話しかけてくる。
「ところでロッシェ、女できたって聞いたんだけどマジ?」
「自慢の鼻で確かめてみろよ」
靴裏なら嗅がせてやっても良いと判断して、顔面にハイキックをお見舞いする。あえて避けずにそれを受けた変態の、やけに楽しそうな気持ち悪い悲鳴が落下していった。