エリルベート 暇だったら来てくれとの連絡が入ったので、空いた時間を使って顔を出してみることにした。
急を要することではないらしいのは幸いだ。こいつは現地の警察に捕まっただの、人喰い植物に脚をもがれて死にそうだの、色々と散々な案件で呼び出してくることが多い。運気をどこかから溢しながら歩いてるんじゃないだろうか。
小刻みな空間転移を繰り返しながら荒野をひた進み、探知用の術式が示す場所に辿り着くと、そこには社屋らしき四角い建物があった。まっさらな大地のまっただ中にただひとつ、ぽつんと。
入口の目の前に位置するカウンターでは、まっすぐ切り揃えた髪と眼帯が特徴的な、見慣れた顔の男が店番をしている。声をかけると安堵したような表情を見せた。
「ありがとう、暇で暇で仕方なくってさ」
頼まれていた数冊の本と携帯ゲーム機を手渡す。職務中のクソ真面目さに定評があるエリーにしては珍しい要求だ。
「今度は何のバイトやってんだよ」
「来客対応」
「……客来んの?」
「来るわけないじゃん」
真顔で告げる声に、ゲーム機の起動音が重なる。
じゃあ何で店番が要るんだよだとか、そもそもこの店何なんだよだとか、訊きたいことは色々とあるが、面倒くさい事情がずるずる出てきそうな気がしてやめた。こいつが各地で経験してくる仕事の混沌っぷりは今に始まったことではない。夢に出るようなやつはもう勘弁してほしい。
とにかく詳しくは今度一緒にメシ食いに行ったときに聞いてみよう。そう決めて踵を返した。