アカシア書房

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#10 No.9 ニールサム

No.9 営業員 ニールサム
ニールサム「筋トレしたい」
 とニールが言い出したのが昨日のこと。鍛錬やら自己研鑽やらには興味がなさそうなそいつが、珍しく真剣に体を動かしている。これで顔色がもっと良ければ平和な光景だったろうに。
 夢魔の街へと営業に赴き、複数の書店と契約を取り付けて帰ってきた直後は、生ける屍かと思うほどに生気のない顔をしていた。枕だってお手の物さ、と自信たっぷりだったこいつも、さすがに本職相手では太刀打ちできなかったようだ。行く先々で契約を条件に絞り尽くされたらしいがよく生きて帰って来れたな。
「本当に平気か、ヤバかったら言えよ」
「だーいじょうぶだいじょうぶ、むしろ体動かしてないと色々フラッシュバックしてチンコ爆ぜて死ぬ」
「お、おう」
 体を動かす理由は、体力をつけることよりも煩悩を掃うことがメインらしい。確かに動いているうちに顔色は良くなった。
 あとはいつも通りの調子が戻れば安心できそうだ。組織でトップレベルの騒がしさを誇るこいつが静かだとなんだか落ち着かない。
「ロッシェ、お前の空間転移術って人の体内とは繋げないのか」
「無理だな。できたら凶悪すぎっつーか何殺す気だよ」
「いや金玉を外部装置的な何かと繋いで、弾切れなしのリベンジマッチを……代わりに何出すのがいいと思う?」
 顔にかかった髪をかき上げながら真剣な面持ちで訊いてくる。いつもの調子が戻ったようで何よりだ。でも再戦はやめとけ、弾数がどうのの問題じゃないだろ。死ぬぞ。