ラビィステフ アカシア書房には魔術仕掛けのデータベースがあり、記者たちが向かった先で手に入れた異世界の情報などが一括管理されている。
その情報を参照できる端末に向かったラビは、表示した複数の地域の暦と、自らの手帳を何度も見比べながら唸っていた。社内で定評のある美声も、今ばかりは残念なことになっている。
「今度は何が被ったんだ?」
「ひっ!?」
俺が端末室に入ったことすら気付いていなかったようで、声に驚いて身を強張らせた。振り向いて「なんだロッシェかあ」と安堵する顔には瑞々しさがある。元気なようで何より。
「えっと、これとこれが被ってて、さらにその直後にこっちが……」
俺に向けてみせた手帳の、白い指で示す先には、竜追われ祭り、鋸魚焼き祭り、焚書慰霊式……と聞いたこともない祭りの名が並んでいる。細やかに記されたタイムラインには他にも様々な祭りの名前が記されていたが、特に気になるものの開催日時が運悪く被ってしまったらしい。
調べる対象が物ではないうえに、触れられる期間まで限られたものだと苦労も多そうだ。
「ね、もしこことここの間が暇だったら、間に合うように送ってもらえないかな」
遠慮がちにこちらを見上げる顔は、小動物を思わせる愛らしさがあり庇護欲をそそる。露出がなくとも豊かさがよくわかる胸にまで目が行ってしまって、その恩恵を受けている男を唐突に締めあげたくなってきた。
「急ぎの用事がなければ大丈夫、何日後だ?」
「二二〇日」
絶対忘れてるから近くなったらもう一回言ってくれ、と頼んでおいた。