アカシア書房

アカシアファミリアス

#05 No.13 ペコリューシュ

No.13 家政夫 ペコリューシュ
ペコリューシュ くたびれきった状態で自社に帰り着き、真っ先に食堂に向かった。飯が食える時間にはかなり早いが、もしかするとあいつが既にいるかもしれないと期待して。
 しかし食堂から覗ける厨房はまだ暗く、飯の仕込みをする音も聞こえてこない。さすがに早すぎたか。テーブルに突っ伏しながらこの施設の主に想いを馳せた。
 今は清掃用の使い魔たちの仕事ぶりをチェックしている頃だろうか。ズボラな仲間たちのために洗濯物を干しているところだろうか。ぼんやりと意識を泳がせていると、厨房のほうから物音がした。重たい音が混ざっていたのは、何か食材が大量に入った箱でも下ろしたからだろう。
 アカシア書房が抱える家政夫であるペコは、顔をあげた俺の前にやってくるなり屈んでこちらを覗き込んでくる。褐色の肌に擦り傷ができているところを見るに、狩りにでも行っていたのかもしれない。鋭利な視線は俺を探ろうとしているようだが不快ではない。
「手空いたらでいいからなんかメシ頼むわ」
 簡潔に告げると、ペコは真顔のままただ頷いて厨房へと引き返していった。無口が過ぎるうえに表情も少なすぎる男だがとにかく仕事ができる。
 程なくして何かが焼ける香ばしい匂いが漂ってきたかと思うと、すぐに汁物用の大きな器をどんと出された。礼を告げて箸でその中身をかき込む。温かい麺は準備の早さからしてレトルトの類だと思うが、その上に乗った大盛りの野菜炒めとよく咬み合ってとにかく食が進む。
 疲労に効きそうな香味野菜と、頼んでもいないのに薬酒を添えてくる気遣いが身に沁みた。