少し離れた場所から、じー……っとこちらを伺う小柄な姿。向かって右の灰色の瞳も、左の海色(色が似ているというだけではなく、本当に南海の水面を封じたようになっている)の瞳も、じゅうじゅうといい音をたてている揚げ菓子に釘付けだ。
一団の新入りにして皆の弟分であるモーリェは、いつもこうやって静かに様子を窺ってくる。物欲しげな様子を隠し切れないままに。欲を出すことを覚えてくれたものの、まだ遠慮は手放せないらしい。
俺は良い感じに揚がったものを皿に移し、その一つに串を刺して差し出した。俺も甘いなーと思いながら。
「味見するか?」
「する!」
ちびすけは三つ編みの髪を揺らして駆け寄ると、目当てのものをぱくりと口に収めた。
表情を見るに口の中を火傷したみたいだが、俺らの治癒力をもってすればすぐに治るだろう。こいつもだんだん身体の扱いが雑になってきたな。
渋い顔はすぐに至福の表情に変わる。どうやらお気に召したらしい。頬袋を持つ小動物のように、ほっぺがもきゅもきゅと動いた。
「おいしい……これ、何か入ってる?」
「ドライフルーツが手に入ったから刻んで入れたんだ。珍しかったか」
「うん」
俺らは仲間の過去を探らないことを掟としているが、共に暮らしているとある程度は透けて見える。
こいつも色々と厳しい環境にいたようで、はじめは黙っていても飯が融通される生活に戸惑っていたし、甘いものを食べては目を爛々と輝かせていた。手に入らなかったんだろうなあ。
あとは皆となと告げつつ、もうひとつだけ揚げ菓子を渡す。また瞳の海が煌めく。
この小動物のような姿を、今のうちにしっかりと見ておくことにした。あと何年か経てば、背が伸び筋肉も付いて、単身で殲獣を狩る逞しい肉食獣になるんだろうし。
やたらと度胸があるから、俺よりもずっと命のやり取りに向いた闘人になりそうだ。ちょっと悔しいが楽しみでもある。
いざという時に助けてもらえるよう、しっかりと餌付けしておこう。