袖のない上着の背中を縦に大きく切って、ほつれないように端を縫う。あとは一・二ヶ所に留め金か紐をつけて完成。
あいつ専用の服のできあがり。
どうしてこんな手間をかけるかって、あいつは袖に手を通せないからさ。いや細心の注意を払えばできなくはないかもしれないけど、高確率で布が切れちゃうんだよね、特に右手側の。
左手の指が刃物、右手に至っては二の腕から先がまるっと剣になってるんだ。長袖を着るのは完全に無理ゲーだね。
更に背中に一対、おれ翼です! みたいな形の触手が生えてるから、そいつを出すための穴が背中に必要でさ。となるとやっぱり切るしかないじゃん。それで触手の下で留められるようにしてはいばっちり。
あと刃物付きの尻尾とか、人を殺せるアホ毛とかが生えてるから、そこの対策も色々と要るわけで。うーん難儀。
……って具合に陽光の下で縫物してたら、そいつを着る当人が森の散策から帰ってきた。
「ただいまーっと、たっぷり稼いできたぜ!」
服とよく鍛えた身体を青い液体で汚しながら、疲れを感じさせない笑みを向けてくる。きりりと整った顔立ちと、纏っている悪臭がアンバランスに、ていうか臭いほんと臭い何これ!?
「おかえりっていうかゲロクソ臭いよ何狩ってたの、あのでかい虫?」
「おう、群れに遭ったから片っ端からさくっとな。水浴びてくるわ」
僕らは殲獣というモンスターを狩るほど雇い主(飼い主のほうが近いかもしれない)から報酬を貰える。尖った歯を見せた得意げな笑みから察するに、相当な数を屠ってきたに違いない。
「っつーか俺、やっぱ半裸のほうが良くないか?」
ドヤ顔から一転、申し訳なさそうな表情を見せたのは、僕が縫っていたものに気づいたからだろう。この服も今日の犠牲と同様に、返り血やら虫の汁やらでダメにされるのは間違いない。でも、
「いーや、着といて。僕のえらさに包まれて生活して」
軽口を投げつけると、あっちも「へいへいそーですか」と笑って返してくれる。そう、これでいいんだ。
イゾラ、僕の友にして腐れ縁、そして共に暮らす闘人たちの長。
誰よりも切に力を求め、次々と異形の器官を備えたきみを、少しでも人の形に近づけておくために――この布切れは必要なんだよ。