週に一度の社内会議を前に出された話題がそれだった。
ロッシェが言うに、本社内で記念日がうろついているのを見つけて捕獲したらしい。愛用のすごいワイヤーで雁字搦めにされた、薄明かりを丸めて縮めたような何かが、とある世界から持ち込まれたと思しき記念日の幼体だ。
会議室に集まっていた十三人は、近くの者と顔を見合わせたり、記念日をまじまじと観察したりした。
「俺じゃないっすよ」
「私も違う、というか初めて見た……なんで飼っちゃダメなの?」
「えーっとねえ、こいつが根付くと毎年その日を祝いたくなっちゃうんだよねえ。どんなクソ理由であっても」
「以前持ち込まれたときは『アリアがデスクで寝落ちてほっぺにリング綴じノートの跡がついた記念日』が生えちゃって駆除が大変だったのよう」
「その話蒸し返したらすごい嫌な顔するから、みんな今の聞かなかったことにしてね……」
この場にいない友のため、若手たちに口止めをするラビ。心を打たれる姿だけれども、たぶん無駄に終わると思うなそれ。
「……で、今回は根付く前に捕まえられたし、怒らないから心当たりのあるやつは教えてくれ」
ロッシェが再度辺りを見回すものの、手を挙げる者はいない。
「今いない奴じゃない? ニールかシャノかそこらへん」
「もうすぐボスも来るし、頼んで記録漁って貰ったほうが早くないか」
「えーやだよこんなしょーもないことで記憶遡られんの」
机を囲んでぐだぐだとした話が続く。そんな中、息を弾ませて会議室に駆け込んできたのは、僕らの主ではなく大きな箱を抱えたペコだった。
「どうしたの? 厨房でも燃えた?」
ペコは身振りで僕の言葉を否定して、早足でロッシェへと歩み寄る。そして記念日を捕えているワイヤーの隙間(だと思う)に手を突っ込んだかと思うと、たちまち記念日の光が消え失せて灰色になってしまった。絞めたのか、これ。
「……お前の?」
ロッシェの問いに頷きで応えると、ペコは記念日を箱に詰めてそそくさと去ってしまった。その後すぐにボスがやってきて、何事もなかったかのように会議が行われて、終わった。
「おめでとう!」
「おめでとー」
「おめっとさーん!」
昼食として膳に上ったスープを口にした同僚たちが、口々に何かを祝う。
僕も何かを祝いたい衝動に駆られてその中に混ざり、一言で満足してまた食事に戻った。根付きそこなった記念日入りのスープは、まろやかな甘みに満ちていた。